性器ヘルペスウイルス感染症とは (IDWR 2002年第51号) より
性器ヘルペスウイルス感染症(genital herpes simplex virus infection 、以下性器ヘルペス)は、
単純 ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾 患である。
感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。
感染はHSV に感染してい る相手との性交によって起こり、相手の性器に明らかな病変がある場合のみならず、
無症状でも性器の粘膜や分泌液中にウイルスが存在する場合には感染する。
また相手の唾液中にHSV が排出 されている場合には、口唇性交によっても感染する。
抗ヘルペスウイルス剤を服用すれば病変はいったんは治癒するが、HSV は一度感染すると神経節に潜伏し、時に再活性化し
患者はその後長 年にわたって再発を経験する。
臨床症状
外部から入ったHSV の初感染によって起こる初発(急性型)と、潜伏感染していたHSV の再活性化によって起こる再発
および非初感染初発(誘発型:過去に感染していたが無症状で、免 疫低下を契機としてウイルスが活性化し、初めて病変を経験する場合)の3 種類の臨床型に分けられる
急性型が症状はもっとも重い。感染機会があってから2〜21 日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、
発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。
病変部位は男性では包皮、冠状溝、亀頭、女性では外陰部や子宮頚部である。
髄膜炎を合併することもある。無治療では、治癒までに2〜4 週間近く要する。
女性では排尿困難や歩行困難のため、入院加療を余儀なくされることもある。
再発型は、心身の疲労、月経、性交その他の刺激が誘因となって起こるが、急性型に比べて病変は小さく数も少ない等症状は軽く、
1週間以内に治癒すること が多い。
再発の回数は月2〜3回から年1〜2 回と様々である。HSV‐2 による場合の方がより再発しやすい。
年を重ねるにつれ、再発の回数は減少してくるのが一般的である。誘発型では、免疫低下の程度によってはかなり高度の症 状を呈する。
感染経路
HSV-1は、主に口と口との接触で伝播し、口腔周囲または口腔内の創部、唾液、皮膚表面に存在する
HSV-1ウイルスとの接触を通して口腔ヘルペス感染を引き起こします。
しかし、HSV-1は性器にも伝播し、口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こします。
HSV-1は、正常にみえる口腔や皮膚表面、さらには症状がないときにも、伝播します。
しかし、感染のリスクが最も大きいのは創部に炎症のあるときです。
既にHSV-1の口腔ヘルペスに感染している人は、その後にHSV-1が性器に感染することはほとんどありません。
稀なことですが、HSV-1の感染は、HSV-1に性器感染している母親から出産時に新生児に伝播することがあります。
新生児ヘルペス
新生児ヘルペスは、分娩中に新生児が産道でHSVと接触したときに起こることがあります。
発生は稀で、世界での出生10万人あたり10人程度での発生ですが、続いて、神経障害や死に至ります。
新生児ヘルペスのリスクは、母親が妊娠後期に初めて HSVに感染したときが最大です。
妊娠前から性器ヘルペスに感染している女性では、彼女らの新生児がHSVの感染伝播を受けるリスクは非常に低くなります。
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